栄養療法(オーソモレキュラー)において最も重要なのは食事だと何度も書いていますが、最もつまずきやすいのが食事であることは否めません。
- 持続が可能なエネルギーを作るまともな食事をほとんどしてこなかった(好きな食べ物・飲み物、簡単に済ませられる食べ物の比率が高い)
- 料理が苦手
- 食に興味を持つ環境で育たなかった(もしくは食に興味を持てない状況に陥った)
- 一度に食べられる量が極端に少ない
治療を始める前の食事がこのような状態であれば、改善が難しくて恩恵を受けにくいです。
栄養療法(オーソモレキュラー)の恩恵を受けるためにできる唯一の方法“食事日記”の重要性をご紹介します。
食事の見える化がもたらす3つのメリット
食事日記は、できることなら写真と文字で残すことをおすすめします。
個人的におすすめできるのはInstagramを使った方法です。アカウントを取得したら非公開設定にします。1日のうちで口にしたものは必ず写真に撮っておき、感想やその日の体調を記入しておいてください。
- 食材の記録
- その日の体調や気分
最低でもこの2つは記録しておくと、1年後には大きな変化に気付くはずです。誰かに見せるものではないので、インスタ映えや文章の良し悪しを考える必要はありません。
偏食が一目瞭然
- 胃酸過少の原因は何かを見える化(ペプシノーゲン値と照らし合わせる)
- 腸内環境を悪化させている原因を見える化(炎症の原因、細菌バランスの悪化の原因など)
栄養療法(オーソモレキュラー)の初期に有効なのが、偏食が一目瞭然になることです。
思い当たる節はありますか?
ドキッとしませんか?
少し長く栄養療法(オーソモレキュラー)を続けている方なら、あまりにも栄養が偏りすぎていることが理解できると思います。
しかし、初期の頃はなかなか気付けません。肉も魚も卵も豆腐も食べているつもりになっていることが多いと、記録することによって理解できるようになっていきます。
「友人とスイーツバイキング。たっぷり食べたから夜は抜いてしまおう」。女性には多いかと……。
お酒も同じです。「昨日は飲みすぎ、食べすぎ(食べすぎたつもり)だから今日はヘルシーに」。ありがちなパターンじゃないでしょうか。
でも、たった1回の食事の乱れが後に大きく響いてきます。「カロリーを維持する」「必要な栄養素は必ず摂取する」の2つを守った上でスイーツやお酒を楽しまないと、健康格差は開いていくばかりです。
「お肉を食べてね」「お魚を食べてね」などと医師や栄養カウンセラーに言われても、初期の頃に「一応、食べているけど?」と思うのは仕方がありません。今までの食事がそれほど悪いとは思っていないし、ましてや栄養不足が不調の引き金になっているとは考えたこともないでしょうから。
人間はすぐに忘れる生き物だから、目に入らなければすぐに楽な方向に向かってしまいます。だからこそ、食事日記をつけることで自分の偏食に気付かなければいけません。
食材と調理法の選別
- 肉や魚のどの部位なら食べられるのかを見える化
- どんな調理方法なら食べても負担がかからないかを見える化
ある程度の偏食が理解できたら、今度は言われた通りのことを実行してみてください。怠くて動くのがつらいと感じている人ほど、肉や魚は食べられないはずです。
胃酸が分泌されにくくて腸の環境も悪いと、本来ならば体にとって必要な肉・魚・卵といった動物性たんぱく質や質のいい脂を消化・吸収できる力がありません。ピロリ菌やカンジダ菌、重金属の問題、胆汁酸の問題などによって消化・吸収が妨げられていることもあります。
しかし、食べられないからといってその食材を避けてしまうと、ますます食べられない状況に陥ります。こうならないためにも試していただきたいのは食材の選別です。
手に入りやすい肉には牛・豚・鶏があります。この3つの中でも部位別に選別していきましょう。「バラ肉は無理でもモモ肉なら食べられる」「牛は全般的に無理だが豚なら少しは食べられる」といった具合に、自分でいろいろと試してみるのです。
自分で食事日記に記録しておくと、現時点で食べられる食材と食べられない食材に分けられます。食べられない食材はひとまず置いておいて、食べられる食材でローテーションを組んでみましょう。魚に関しても同じです。
これができるようになったら、調理法の選別も行いましょう。以前に私の体で実験をしたことがあるので参考になさってください。

「ゆでたり蒸したりすれば食べられる」「スープにすれば食べられる」「牛・豚は難しいが、鶏肉なら焼いたものでも食べられる」といった具合に試してみてください。
食材と調理法の選別をすることによって、食べられるものの幅が広がります。外食でメニューを選ぶ時も同じように考えて選んでください。
最初は食べられるものが限定されますが、少しずつ消化能力が上がっていくので、数カ月後には食べられなかった食材や調理方法でもチャレンジしてみるといいでしょう。
体調の変化と食事の変化
- 食べられる食材と調理方法を試してから起こった体調の変化を見える化
- 現時点で食べられる食事(食材、調理方法)を見える化
消化能力と吸収力が上がると、体調にも少しずつ変化が出てきます。理想とするところまで良くなっていないとしても、体が軽くなっていたり今までつらかったことがつらくなかったりと、自分にしか分からない変化が絶対に出てくるはずです。
体調の変化が分かれば、食事も少しずつ人並みにまで変化させることは可能です。たくさんの量が食べられなくても、「楽しめた」というところまで持っていければグングンと調子も上がっていくでしょう。
食事日記はこれらの変化もひと目で分かるので、日課にしてしまってずっと続けることをおすすめします。特に、女性は生理の周期によって体調が変化しやすいので、時期によって避けた方がよい食べ物が頭に入っていると気分が左右されにくくなります。
三進二退で確実に変化する体調
“三進二退”は私が作った造語です。水前寺清子さんの『三百六十五歩のマーチ』から名付けました。
昨日よりも今日、今日よりも明日、明日よりも明後日が良くなっていても、明々後日にドーンと落ちてしまうことは自然なことだと考えてください。それでも、1日目よりも4日目の方が確実に良くなっていると捉えるのです。
偏差値40の人が良い先生について勉強したとして、1年後に東大を受験しても受かる確率はゼロに近いです。しかし、2年後や3年後なら確率がグンと上がります。
栄養療法(オーソモレキュラー)も同じで、大きく方向転換をしなくても、栄養が吸収されるようになれば体は確実に変化していきます。
↓こちらはInstagramとTwitterのフォロワー(山里さん)のお食事です(許可を得て掲載させていただきました)。
補食でボーンブロススープも飲まれているはずです。
動ける日もあれば体調が悪い日もあるようですが、山里さんにはものすごく大きな変化が訪れました。1年くらい止まっていた生理が再開したのです。それも月ごとに!
女性にしか分からないですが、月のものは確かに面倒です。体にとって大切な鉄も約30mgは出ていってしまうし、「来てくれない方が楽。不快感もないし」などと思うこともしばしば……。でも、月経は健康のバロメーターでもあります。
妊娠以外で生理が止まるということは、命に危機が迫っていることを示しています。体の機能がストップしないように、出血を止めることによって命を守っているわけです。
山里さんの生理が再開したということは、栄養状態が少しずつ改善していることを意味します。
通院する病院に良い医師や栄養カウンセラーがいたとしても、毎日一緒に食事のサポートをしてくれるわけではないので、栄養療法(オーソモレキュラー)を続けるなら食事日記で見える化することで一歩ずつ前に進むしかありません。
似たような症状があったとしても、ひとりひとりの体は別物です。「抜くべき食材は抜く」は基本ですが、増やした方がいい食材は全ての人に当てはまるわけではありません。Aさんに合ってる食事方法がBさんに合うとは限らないので、自分で試行錯誤をしてみてください。
山里さんの食事でぜひまねをしていただきたいのは汁物です。野菜・肉・魚介類がたっぷりと摂取できるのがお分かりでしょう。消化が難しい人ほどスープに頼ることをおすすめします。


三進二退を繰り返しているうちに、年単位で見れば「去年よりも確実に良くなっている」と実感できる日が来ます。健康は1日では戻りません。
この記事のまとめ
- 食事の見える化をすることによって「今までの偏食」「現時点で食べられる食材(部位)」「調理方法」「食事を改善した後の体調の変化・食事の変化」が分かるようになる。
- 日にち単位では分からない体調の変化を年単位で観察する。食べられるものが少しずつ増え、1日単位では感じられなかった前進が分かるようになる。
- 確実に改善が進んでいる山里さんの例をご紹介(ぜひ参照のこと)。