栄養療法(オーソモレキュラー)では高濃度ビタミンCによるガンへの治療がしばしば行われます。
しかし、残念なことにほとんど効果を得られない方もいるのです(私の父がそうでした)。その理由とは一体?
ビタミンCがガンに効く理由
ライナス・ポーリング博士の発見
大量のビタミンCがガン治療に応用できることを発見したのは、二度のノーベル賞を受賞したアメリカの生化学者『ライナス・ポーリング博士』です。
1970年代にはビタミンCの静脈投与によるガン患者の生存期間延長に関する発表をしましたが、反対勢力の論文によりお蔵入りになっていました。
ポーリング博士の論文を信じてビタミンCとガンについての研究をし続けてきた医師が『ヒュー・リオルダン医師』です。
リオルダン医師は2004年に亡くなりましたが、その翌年にアメリカ国立衛生研究所から高濃度ビタミンC療法の基礎研究論文が発表され、アメリカでは急速に広まっていきました。
↓詳しいことを知りたい方はこちらの本をお読みいただくと分かりやすいです。
ガンに対するビタミンCの働き
ブドウ糖とビタミンCは化学式の構造が似ています。理由は、ビタミンCがブドウ糖から作られるからです。
哺乳類のほとんどは体内でブドウ糖からビタミンCを合成できますが、人間にはその機能がないために食事からビタミンCを摂取する必要があります。裏を返せば、どんなにブドウ糖を増やしてもビタミンCは作れないということです。
ブドウ糖といえば真っ先に使われるエネルギー。これはガン細胞が増殖するためのエネルギー供給でも同じことがいえて、ものすごいスピードで搾取していきます(正常細胞の6倍以上)。
ブドウ糖とビタミンCの構造は似ているので、細胞の中へは同じように入っていきます。
これを利用したのが高濃度ビタミンC療法です。ガン細胞にブドウ糖を与える代わりにビタミンCを与えます。よって、最も効果的なのは断糖状態の時です。
ビタミンCはガン細胞の中で過酸化水素を発生させて強力な酸化作用でダメージを与えるため、ガン細胞の活性作用低下や死滅を狙います。
正常細胞内ではカタラーゼ(酵素)によって水素と酸素に分解されるため、抗がん剤のように正常細胞を傷つけることがありません(副作用が起きにくい)。
ガン細胞へ効かせるためには血中濃度を350〜400mg/dlまで高める必要があり、点滴で50〜100gのビタミンCを投与します。
ビタミンCはガンと闘う免疫細胞の主役“NK細胞”の活性化にも役立ちます。ビタミンCの作用と自己免疫“NK細胞”の強力な力で、ガン細胞の死滅やガン細胞との共存が可能になるのです。
父は週に2回75gの点滴、経口摂取で10g/日でした。
高濃度ビタミンC点滴が効かないのはこんな人
糖尿病・隠れ糖尿病の人
先に説明した通り、高濃度ビタミンCがガンに効果的なのはブドウ糖とビタミンCの化学構造が似ているからです。
体内にブドウ糖が少なければビタミンCが有効に使われますが、糖尿病や糖尿病予備群である高血糖状態では効果が弱まってしまいます。
父はガンが発覚する前から糖尿病の治療をしていました。家ではしれっと糖質制限を装っていましたが、外で好き勝手に食べていたために血糖値は常に高かったわけです。
父の場合は点滴を始めるのが遅かったので、点滴を導入した頃には高血糖の問題は低かったのですが……。

高濃度ビタミンC点滴は1日でも早く始めた方が効果は高まりますが、始める時点で高血糖の問題が含まれるとガン細胞への取り込みが難しいので、うまく効かない可能性が高まります。
糖尿病予備群は、厚生労働省が行った平成28年「国民健康・栄養調査」では約1,000万人と出ていますが、実際は検査に引っかからない人もいるはずなのでもっと多いでしょう。
ガンは誰にでもなる可能性があるため、糖尿病予備群であればいざという時に一つの選択肢が消えるということを意味します。
腎臓・心臓に問題がある人
高濃度ビタミンC点滴を実施するにあたっては、水分がしっかりと排泄(はいせつ)できる必要があります。水分を排泄できないと腹水がたまり、最終的には死を招きます。
利尿剤やアルブミン製剤で回避する方法もありますが、もともと腎臓や心臓に問題があると一筋縄ではいきません。
栄養療法(オーソモレキュラー)を実施している医師でも過信は禁物。主治医に状況を確認してから行わないと、望んでいない結果が待っているかもしれません。
栄養状態が悪い人
ガンになるということは既に栄養状態が悪いわけですが、ステージによってかなり差があります。
父が診断された時は既に末期状態でした。自分で自覚症状はあったはずなのですが、検査をしに行ったのは食べるのも食べ物のにおいを嗅ぐのもつらくなってからです。
高濃度ビタミンC点滴を始めた時は既に何も食べられない状態でした。サプリメントは飲んでいたのですが、食事が摂取できない状態なので恐らく吸収もできていなかったでしょう(数値もどんどん下がっていった)。ギリギリのラインで点滴を始め、2カ月くらいは持ちこたえました。
しかし、栄養状態が悪いとやはり腹水を招きます。利尿剤を使用しても、抜いてもらっても、もはやどうにもならないところまで悪化していると高濃度ビタミンC点滴は効きません。
腹水には栄養が混ざっているので、医師も簡単には抜こうとはしないのです。ある程度まで様子を見て抜き、栄養素を体に戻してくれますが、終末期ともなるとあまり意味はなくなってしまいます。
栄養状態をある程度まで保つことは、ガン以外の治療でもとても重要なことです。
食べられなくなってしまった人
「栄養状態が悪い人」と重複してしまうのですが、食べられるか食べられないかはガンの治療において大きな意味をもたらします。
食べることさえできれば、体と相談して食事を変えられます。サプリメントも取り入れれば、少なくともガンに打ち勝つ体の基礎が作れます。
しかし、「食べられない」「サプリメントを飲むのも一苦労」という状態では、どんな治療にも耐えられないし、自然治癒力を高めることも不可能です。
この状態で高濃度ビタミンC療法を取り入れても闘う力はありません。
食べられなくなるまで放っておかないことが重要。自分の体と対話する能力を持たないと、最後にもがこうとしても誰も助けられないのです。
ガン治療でビタミンCを効かせるためにやっておくべきこと
当たり前のことですが、ガンを発症させないというのが一番です。
しかし、ガンになるかならないかは自分で決められることではありません。体に気を遣って生活していても、発症してしまう時は発症してしまうのです。
ガンが発覚した時に闘うだけの強さを持っていること。それは、日頃の生活習慣にかかっています。
- 糖質が過剰にならない食生活をする
- 好き嫌いをせずになんでも食べる(偏食は絶対にダメ)
- 体の基盤となる栄養を毎日食べる(“食べたいもの”ではなく“食べなければいけないもの”を)
- 適度な運動をする
- 質の良い睡眠を取る
- ストレスケアを行う
など
言わずもがなですが、喫煙や発がん性物質を口にすることなどは避けるが吉です。
ガンになってから栄養状態を見直すのは非常に効率が悪いので、万が一にもガンになってしまった時にすぐリカバリーができる生活習慣を身に着けておくと、高濃度ビタミンCは本領を発揮してくれます。
高濃度ビタミンC療法を取り入れるかどうかは、家族の希望ではなく本人の希望であることが重要です。サプリメントの摂取も同様。本人が納得していないのに取り入れるのは、家族のエゴでしかありません。
この記事のまとめ
- ビタミンCがガン治療に応用できることを発見したのはライナス・ポーリング博士、それを研究し続けたのがヒュー・リオルダン医師である。2005年には高濃度ビタミンC療法の基礎研究論文が発表されて広まっていった。
- ガン細胞へのブドウ糖供給を断ち、代わりにビタミンCを供給することでガンの死滅を図るのが高濃度ビタミンC療法。ビタミンCはNK細胞の活性化にも役立ち、一石二鳥である。
- 「糖尿病・隠れ糖尿病の人」「腎臓・心臓に問題がある人」「栄養状態が悪い人」「食べられなくなってしまった人」が高濃度ビタミンC点滴を行っても効果が薄れてしまう。
- ガン治療でビタミンCの力を発揮するためには、ガンを発症してもリカバリーできるように生活習慣を整えておく必要がある。
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹 著
『がんになったら肉を食べなさい がんに勝つ栄養の科学』溝口徹 著
ライナス・ポーリング – Wikipedia