企業に属している人は年に一度の健康診断を受けると思いますが、専業主婦(主夫)や自営業・フリーランスなどは受けていない人も多いでしょう。
健康診断や人間ドックは意味がないと話す医師もいますが、年に一度くらいは受けておくことをおすすめします。少ない検査データからでも、自分自身の栄養不足がある程度は読み取れるからです。
「特に問題なし」のデータでも、起こりやすい不調の改善に役立ちます。
- 肌の不調(乾燥、シミ、しわ、たるみなど)
- 髪の不調(抜け毛、白髪、コシがなくなるなど)
- 激ヤセ、激太り、隠れ脂肪肝
- 食欲減退(胃もたれ、便秘、軟便、下痢、胃痛、腹痛など)
- 頭痛
- めまい
- もの忘れ
- イライラ
- 聴力低下
- 視力低下
- 意欲低下
- 不眠(寝覚めがスッキリしないも含む)
- 体力減退
- 疲労感(寝ても疲れが取れない)
- アレルギー反応
など
検査データから読み取れる栄養不足とは
- 総タンパク(理想:7.5g/dl〜)
- アルブミン(理想:4.5g/dl〜)
- AST(GOT)(理想:20〜28U/L)
- ALT(GPT)(理想:20〜28U/L)
- γ-GTP(理想:20U/L)
- ヘモグロビン(理想:14〜16g/dl)
- コレステロール(理想:総コレステロール180〜280mg/dl、HDL60mg/dl、LDL120〜160mg/dl)
※あくまでも理想値であって、この範囲内に含まれていればOKという基準ではありません。
これらの数値から分かるのはたんぱく質の摂取量や合成量です。たんぱく質の摂取量・合成量が低く出るということは、ビタミンやミネラルの吸収も低いと考えて問題ありません。
たんぱく質が合成できていないからだでは、必然的にビタミンやミネラルの吸収もできないからです。
まずは基準値に含まれるかどうかでチェックします。特に、総タンパクがLowと出ている場合(基準値以下)は究極のたんぱく質不足と捉えてください。
たんぱく質をそこそこ食べているつもりでも低く出ているのであれば、何らかの原因で再合成する力が劣っているか、リーキーガットによって血液内に漏れ出ているかが考えられます。
基準値内であっても7.5g/dl未満であれば不足していると考えます。肌の調子が悪い、年齢とともに肉や脂ものがつらくなってきたなどの自覚症状があるはずです。
他の数値はマスクされることもあるので完全な指標にはなりませんが、理想の数値に満たない場合は栄養不足と考えて問題ないでしょう。上記のような不調が現れているはずです。
自治体が行っている健康診断では総タンパクやアルブミンは測定してもらえないかもしれませんが、大抵の場合は総タンパクの測定はしてもらえます。
測定されていない場合は「AST(GOT)/ALT(GPT)/γ-GTP」のチェックをしてみてください。3つの数値がバラバラに出ている場合は極度のタンパク質不足が考えられます。
栄養不足を見つけた後の対処法
- 食事の管理
- 歯科健診
栄養療法(オーソモレキュラー)を取り入れるにしても取り入れないにしてもこの2つは必須です。
食事の管理は忙しいからといって疎かにしてはいけません。

食事のチェックとその日に起こった出来事や感情を照らし合わせる癖がつくと、何が原因で栄養不足が起こっているのかが理解できます。
食事に関する問題がいくつも浮き彫りになるようであれば、食事と生活習慣を考え直す必要があります。
実際のたんぱく質の摂取量と数値に出てくるたんぱく質の摂取量・合成量は一致しないことが多いです。
大きなストレスを感じている時には栄養の吸収力が著しく低下することもあり、食べていても吸収できていないという現象が起こります。
ストレスがあっても食欲に変動がない方は要注意です。食べられるに越したことはありませんが、消化酵素の力は借りておくことをおすすめします。
以前にもおすすめしましたが、消化酵素サプリメントを使って消化を助けてもらうのも一つの手です(下は小麦や乳製品を口にする時用)。
できることならオプション検査でペプシノーゲン(ピロリ菌検査も一緒に)を測定してもらってください。胃酸不足があれば胆汁酸もすい液も腸液も不足しているはずなので、無理をして食事を続ければからだのどこかに異常が現れます。
市販の胃腸薬を使っている人もいると思いますが、胃酸分泌抑制薬や制酸剤が入っているものだとますます消化能力が衰える可能性が高いです。胃酸不足なのに常用していると、加齢とともに食事量が減っていきます。
歯科検診は歯の痛みや歯茎の痛みを感じていなくても受けてください。少なくとも、3カ月以内に歯科へ行ったことがない方は必ず行きましょう。歯周病が栄養の吸収を妨げる原因になっているかもしれません(炎症)。
30歳を超えると歯周病のリスクは一気に高まります。口の中に悪い菌が多く住み着いていれば、飲食とともに体内へ入り込んで病気を引き起こすこともあるくらいです。必ず歯周病のチェックはしてもらいましょう。
歯科もピンキリなので、顕微鏡やレントゲンで細かくチェックしてくれる歯科医を見付けてください。3カ月に一度はチェックしてくださる丁寧な医師を選ぶことをおすすめします。
健康診断や人間ドックを受ける前の注意点
- 採血するなら朝
- 激しい運動を避ける
- 検査前の水分補給(おすすめは白湯)
この3つは最低限の注意点です。
採血を午後にすると、単なる病気のチェックという点では特に問題にならないかもしれませんが、栄養不足を見つけるという点では問題が多いです。
栄養療法(オーソモレキュラー)を知る前に午後から検査をしたことがあるのですが、午前に検査した数値と午後に検査した数値には誤差がありました。午前の検査だと断食時間が長いですが、午後の検査だと断食時間が6時間程度なので影響したのでしょう。
会社の健康診断だと選べない可能性も高いですが、個人で予約する時は血迷うことなく朝を選んでください。
激しい運動も数値を大きく変化させます。赤血球の細胞膜が破壊されることによって成分が漏れ出すと正しい数値が出ません。再検査の可能性も高まるので要注意です。
定期的に激しい運動をしている方は軽いウォーキングやストレッチ程度に留めるようにしておくといいでしょう。
検査前の水分補給は「水またはお茶であればOK」と書かれていることが多いです。できるだけ正確性を求めるなら水または白湯にしておいてください。
水分を摂取せずに検査をすると、血液が濃くなっていて正しい数値が出ないことがあります。ほどほどに水分補給をしておきましょう。
ちなみに、いわゆる肝臓の状態を表す「AST(GOT)/ALT(GPT)/γ-GTP 」の数値に問題がなかったと喜ぶ酒好きさんがいますが、実際は喜べない数値になっている可能性も高いです。これらの半減期(代謝・排せつで数値が半分になる速度)は「AST(約半日)/ALT(約2日)/γ-GTP(2,3週間)」なので、事前に飲酒をセーブしていると正しい数値が測定できず、手遅れになってしまうということも大いに考えられます。
この記事のまとめ
- 少ない検査データから栄養不足を読み取る時は「総タンパク」「アルブミン」「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γ-GTP」「ヘモグロビン」「コレステロール」をチェックする。たんぱく質の摂取量や合成量が読み取れる数値で、低く出る場合はビタミンやミネラルといった栄養素の不足とも捉えられる。
- 栄養不足を見付けたら食事管理を徹底する。メモや画像でチェックすると栄養不足になる原因が見付けやすい。
- 歯科検診をしていない場合は必ず行く。歯周病のチェックは必須。
- たんぱく質の摂取には、食事の仕方を変えたり消化酵素サプリメントを使用したりする。体内にある少ない消化酵素だけでは負担が大きくなる。
- 健康診断・人間ドックを受ける時は朝がおすすめ。
- 溶血によってデータが大きく変わる可能性のある激しい運動は避ける。
- 水分を取らずにいると血液が濃くなるため、適度な水分補給が必要である。
『栄養の教科書 改訂新版』中嶋洋子 監修
「まじめ」は寿命を縮める「不良」長寿のすすめ 奥村康 著
『血液栄養解析を活用!うつぬけ食事術』奥平智之 著