「どんなに寝ても眠い」「睡眠時間は長いのにいつもだるい」「起床後も疲れが取れない」といった悩みを抱えるのは、眠りが浅くなりやすい3つの生活習慣が原因かもしれません。
- 糖質の過剰摂取
- カフェインの常飲
- 就寝前の交感神経刺激行動
多くの人がやってしまう三大生活習慣を改善してみて、全く改善の余地がない場合は検査をしてみてください。重大な病を抱えている可能性が高いです。
眠りが浅くなる3つの生活習慣
糖質の過剰摂取
以前にもご紹介した極端な食事例。
- 朝食:食パンとコーヒー
- 昼食:パスタ
- おやつ:ロールケーキ
- 夕食:ビーフシチューとパン

似たような食事が当たり前になっている方は意外と多いです。男性も女性も。いつも通りの食事なので、糖質の過剰摂取だと気付けません。
一見するとおやつだけが糖質に見えますが、「糖質」というカテゴリーで見たらパンもパスタ(麺類)も全て糖質に含まれるのです。
このような食事を続けていると血糖値の変動が激しくなり、血糖値のコントロールが難しくなります。
夕食にご飯や麺類をたっぷりと摂取し、食後のデザートとして果物やお菓子類を食べると夜間低血糖が起こります。お酒も同様です(糖質以外の問題もあり)。
低血糖を回避するために「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」といった興奮系ホルモンが分泌され、交感神経が優位になって眠りが浅くなります。
ストレスやアレルギーから体を守る「コルチゾール」も血糖値を上げる作用があるホルモン。生命維持をしようと頑張るほど、睡眠が浅くなって「眠い」「だるい」「疲れが取れない」を引き起こします。
カフェインの常飲
カフェインに覚醒作用があることは多くの方がご存じでしょう。午後の眠気覚ましとしてコーヒーを片手に仕事という方も少なくありません。
コーヒーでは効果が期待できず、エナジードリンクで日々頑張っている方も多いです。
血中カフェインの半減期は、約4時間といわれているが個人差がみられ、2~8時間の幅がある。
(「日常生活の中におけるカフェイン摂取-作用機序と安全性評価-」より引用)
カフェインが睡眠に悪影響を及ぼすことはよく知られている。例えば、成人では、100mg以上のカフェイン摂取は睡眠潜時の延長、睡眠時間の短縮を引き起こすことが報告されている(Landolt et al., 1995)。一方、100 mg未満では睡眠に対して著しい影響を及ぼさないという報告もある(Dorfman and Jarvik, 1970)。しかし、感受性の個人差を考慮すると、より少量のカフェインでも、睡眠に悪影響が生じると考えるべきである。
(農林水産省ウェブサイト「カフェインの過剰摂取について」より引用)
エナジードリンクや眠気防止剤などは、ぶどう糖果糖液糖や添加物といったその他の成分も含むので飲まない方が身のためです。
飲まないと仕事に支障が出るという方は、もはや中毒と認識した方がいいでしょう。疲れが吹き飛ぶような感覚を覚えますが、体は死に向かっているかもしれません。
高濃度のカフェインは、アドレナリンをバンバンと出してくれます(やる気満々に!)。アドレナリンは血糖値を上げるホルモンで、血糖値とともに血圧も上昇させます。繰り返していると血管と心臓に負担が掛かってしまいます。
カフェインの常飲は眠りが浅くなる悩みだけでは終わりません。扱いはお酒と同じと考えましょう。
私もかつては眠○打破を常飲していました。これがないと深夜帯に運転をする夜勤を乗り切れず、睡眠時間が短い日の日勤も飲まないと仕事ができませんでした。無知は本当に恐ろしいです。
就寝前の交感神経刺激行動
日々、誰もがやっているであろう行動が“就寝前の交感神経刺激行動”です。
- テレビ、動画、映画鑑賞
- 読書
- 就寝直前の入浴
- 就寝直前まで家事・仕事
- SNS、ネットサーフィン、ゲームなど
- 心を揺さぶる音楽を聴く(眠りを誘う音楽は良い)
- 疲れを伴う運動
- 寝酒
思い当たる節はないでしょうか(私も読書や配信動画鑑賞などがやめられない)。日常茶飯事になっていると自律神経の乱れにつながります。
寝る時は副交感神経が優位になっていた方が質の良い眠りに就けます。しかし、現代病ともいえるこれらの行動は誰もがやめられずにいるため、交感神経が優位のまま眠りに就くので厄介です。
眠る直前まで交感神経が活発な状態だと脳が興奮しているため、入眠するまでに時間がかかります。入眠しても深い眠りに就けないことが多く、途中で目が覚めたり夢を見たりして疲れが抜けないのです。
このような睡眠が続くと、日中の行動に支障が出たりホルモンバランスの乱れにつながったりします。放っておくと、精神疾患やアレルギー(花粉症を含む)や自己免疫疾患などに発展しかねません。
血糖値のコントロールと睡眠の質
3つの生活習慣に共通する血糖値の上昇
上記3つの生活習慣に共通するのが血糖値の上昇です。

ホルモンを作る材料(たんぱく質や脂質)が足りているうちは体が頑張ってくれますが、「糖質の過剰摂取」「カフェインの常飲」「就寝前の交感神経刺激行動」を続けていると歯車が狂います。
本来ならば緩やかに上昇と下降を繰り返すはずの血糖コントロールが難しくなり、「イライラ」「うつ状態」「もの忘れ」「食欲低下」「胃腸の不調」「老化」「アレルギー(花粉症を含む)」「風邪」などに発展していきます。
あまりにも負担が大きい場合は、突然死に至る可能性も……。
「ストレスないのに眠れない」などと考えている方は、もはや重症であると自覚しましょう。体がストレスを処理しきれなくなるところまで進んでいる可能性が高いです。
ストレスを感じさせない生活習慣改善方法
- “避けて吉な糖質”を意識する(仕事の効率が上がるのでおすすめ)
- カフェインを摂取する時間を考慮する(やめられるなら毎日は摂取しない)
- 最低でも就寝の2時間前までには脳を使う行動をやめる(家事や仕事は起床後にするのがおすすめ)
まずは糖質過剰の食生活を見直してみてください。ストレスがかかりそうですが、実は最もコントロールしやすい方法です。
忙しい方ほどしっかりと食事をしなければいけないのに、簡単に済ませられる糖質の多い食生活に偏っています。
どうしても食事に時間を割けないのであれば、出汁の効いたみそ汁やスープ(無添加の鶏ガラ液体スープを使うのがおすすめ)を飲むようにしましょう。サプリメントの活用も考慮してください。
- 砂糖(精製したものはやめるが吉)
- 麦類(小麦、大麦、ライ麦など)
- ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖など(清涼飲料水はやめる)
- 野菜や果物のジュース(液体は強敵)
- 糖質を含む食材の粉末(米粉、きなこなど)
などの血糖値を急激に上げやすいもの
果物だけで済ませる朝食や毎日のスイーツも避けましょう。冷えが治まって「手足が冷たくてなかなか眠れない」という問題も解消してくれます。
糖質の過剰摂取がなくなると、日中に起こる眠気やだるさは減少します。カフェインに頼らなくても済むようになるので、飲まないと頑張れなかった体は楽になります。
頭痛やアレルギー症状なども緩和するため、カフェインを含む医薬品に頼ることも少なくなって一石二鳥です。
「コーヒー」「紅茶」「緑茶」などのドリンク類は、し好品として飲むならせめて就寝時間の8時間前までに留めておくのが無難でしょう。
ここまで改善できれば深い眠りまであと一歩。あとは寝る前の行動に意識を向けるのみです。
脳を使う行動はやめる!
これが最も難しいですが、明日の朝に回せるものは全て朝に回すくらいの意識が必要です(意識を向けることでブレーキがかけられるようになる)。
睡眠の質を上げる栄養素
睡眠に必要なホルモンがメラトニン。メラトニンを分泌させるために必要な栄養素が以下に示すものです。
全てのホルモン分泌に関わっている重要な栄養素。たんぱく質に含まれるアミノ酸の中で、メラトニンの合成に関わってくるのがトリプトファン。リラックス効果を高めるGABAの材料になるグルタミンや、心のバランスを整えるグリシンも重要なアミノ酸である。肉・魚・卵といった動物性たんぱく質に多く含まれる。消化機能が低下している場合は、アミノ酸サプリメントで摂取するのがよい。
メラトニンやGABAを合成するのに必要なビタミンB群がビタミンB6とナイアシン。神経を守る役割があり、メラトニンの合成に必要なセロトニンの前駆体を合成するのに必要な葉酸。これらは動物性たんぱく質に多く含まれる。
たんぱく質(アミノ酸)の代謝に必要な栄養素。鉄の吸収も助ける。「ストレス」「喫煙」「飲酒」「運動」「食品添加物」「環境汚染」「風邪やインフルエンザ」などで必要量が増すため、摂取量に個人差が出る栄養素でもある。食事からはほとんど摂取できないため、サプリメントで摂取した方がよい。
神経伝達物質を作り出す時に必要なカルシウム、メラトニンの原料となるセロトニンの前駆体を作る鉄、セロトニンからメラトニンを作り出すマグネシウムといったミネラルが必要。魚介類(カルシウム、マグネシウム)や肉(吸収のよいヘム鉄)によって多く得られる。
消化機能が低下している方だと、無理なたんぱく質の摂取で内蔵に負担がかかり、かえって睡眠の質を悪くすることもあります。出汁やボーンブロスを活用したり、アミノ酸サプリメントを組み合わせたりして負担を軽減しましょう。

この記事のまとめ
- 現代人に多い眠りが浅くなる3つの生活習慣「糖質の過剰摂取」「カフェインの常飲」「就寝前の交感神経刺激行動」は、眠りの質に影響を与える血糖値のコントロールが乱れる。
- 血糖コントロールが乱れると、ホルモンバランスが乱れてさまざまな不調を引き起こす。ひどい場合は突然死に至ることもある。
- 食生活を見直すことでカフェインの常飲が減り、体の不調も起こりにくくなる。深い眠りに入りやすい体が作れるので、就寝前に脳を覚醒させなければ「眠い」「だるい」「疲れが取れない」といった問題を解消しやすい。
- 睡眠の質を上げる栄養素は「たんぱく質」「ビタミンB群」「ビタミンC」「ミネラル」。動物性たんぱく質やサプリメントの摂取で睡眠に関わる栄養素の底上げが必要である。
『血液栄養解析を活用!うつぬけ食事術』奥平智之 著
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹 著
『花粉症は1週間で治る!』 溝口徹 著
『栄養の教科書 改訂新版』中嶋洋子 監修
日常生活の中におけるカフェイン摂取-作用機序と安全性評価-
農林水産省ウェブサイト「カフェインの過剰摂取について」