kokua Tour 2016 「Progress」~音楽の神々たちの遊びに泣かされる~

夜の貴重なお時間にご訪問いただき、誠にありがとうございます。楽食楽生クリエイターのちえ(@funky_nutrients_c25)です。

@NHKホール 2016.6.24

10年前に誕生し、今年になってファーストアルバムを発表したプロフェッショナルなバンド”kokua”のツアーファイナルに行ってまいりました!

アダルトナイトということなので、Tシャツ×ジーンズでの参戦はやめ、大人らしく(?)ミモレ丈のスカートをはいて行きました。座席指定のホールツアーのため、スタンディングが嫌だと言っている11歳年上の後輩と楽しみました。

“音楽の神々たちの遊び”とは、某CDショップのポップに書かれていたそうです。新人バンドではありますが、プロ歴は20~30年選手の方々! 多くのミュージシャンを支えているプロミュージシャンたちの集まりですから、一般的なバンドとは音が違います。

余裕があるからこその遊びと言えばいいのでしょうか? 音の粒が一つ一つハッキリと伝わってきて、負けじとスガ氏から発せられる歌声も一文字ずつ伝わってきました。3階という運の悪さでしたが、行けて良かったです。

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kokuaってどんなバンド?

正式にはkōkuaと書きます。NHK総合『プロフェッショナル~仕事の流儀~』の主題歌のためだけに作られたバンドかと思いきや、10年目の今年になってから、スガ氏の呼びかけにより1stアルバム『Progress』が発売されました。

スガ氏がボーカルを務めるため、スガマニア以外には違いが分からないと思いますが……。スガ氏のソロではめったに表現されない前向きな歌詞が多く、どの世代でも安心して聴けるアルバムが完成したと思います。

「シングル『Progress』以上の名曲なんて出てくるのか?」と思っていましたが、kokuaのオリジナル曲はどれもすばらしいです。

メンバー
  • 武部聡志(キーボード、バンマス)
  • 小倉博和(ギター)
  • 根岸孝旨(ベース)
  • 屋敷豪太(ドラム)
  • スガシカオ(ボーカル)

(敬称略)

豪太さんは「午後パレの人」という認識しかありませんでしたが、Simply Redの正式メンバーだったのですね! 誰もが必ず一度は耳にしたことがある『Stars』の発表時にメンバーだったこともあり、ミック・ハックネルに直談判して日本語訳詞の許諾がもらえたとか(しかも、この訳詞が非常に良い)!

シカタイ(メルマガ)でこのことは知っていましたが、ライブでは「日本の音楽の教科書に載るミュージシャンだから」と伝えたら一発OKが出たと話されていました(そんなわけあるかーい!w)。

音楽の神々たちの”本気の”遊び~ライブの感想~

kokuaのテーマに「未来・夢」があります。個人的にこういう系統の曲は大好物ですが、スガ氏には求めていません(笑)。

「キラキラしてますよね。ソロでこれやったらマジでファン全員いなくなると思うんですけど」とぶっちゃけるスガさん

(J-WAVE NEWS「スガ シカオ「kokuaでの作詞は合気道」メンバーの思いを代弁」より引用)

スガ氏のソロだともっと内に歌詞が向いているというか、「ポジティブではないけれど本当の自分」が描かれていることが多いです。わりとダークな歌詞にファンクやソウルのリズムが乗ってくるから好きな人が多いのだと思います。ご本人が仰る通り、ソロでやったらファンがいなくなるでしょうね(笑)。

kokuaで活動することはないと思っていたので、しっかりとテーマのある曲がたっぷり詰まった音楽に触れられたことは人生の糧になっています。スガシカオではなく、kokuaのファンになりました(今更ながら)。「最高のパフォーマンスをありがとうございました!」という言葉しか出てきません。

未来・夢・ジブン

武部さん作曲のインストゥルメンタル『BEATOPIA』とともに幕開け。ここ数年のスガライブでは見られない大人な演出が光ります。いつもとは違うワクワク感を胸に、スガ氏の登場で始まった2曲目は、想像もしていなかった『Progress』でした。ここに持ってくるとは意外でした。

タオルを購入して、例の「一歩だけ前に進もう」をやりたかったのですが、既に売り切れていました。東京では購入できた方が少なかったみたいで、タオルを掲げている人は少なかったように思います。残念……。

とりあえず、『Progress』のことは置いておいてですね、3曲目にアルバムの中で2番目に好きな『幼虫と抜け殻』が演奏されました。

今日は昨日の抜け殻で
明日の幼虫で🎤

削除したアカウントのツイートより

この歌詞が私のドツボでして。久々にスガ節を聴けた気がしてうれしい! だって、「今日は昨日の抜け殻」とか「明日の幼虫」なんて考えられますか?

ソロではわりと言葉を濁らせていることが多いのですが(というか、わざとハッキリと聞こえないようにしている)、kokuaではハッキリと聞き取れる歌い方をしているのが印象的です。ライブでも歌詞の一つ一つがハッキリと伝わってきて、思い切り聴き入ってしまいました。

『幼虫と抜け殻』は、わりとスガ氏のソロに近いダークな感情がポツポツと描かれています。ダークな過去や未来に失望するのではなく、しっかりと今を見据えた上で希望ある未来につながる気がして、聴いていて心地が良いです。明るいロックな曲調が影を落とす歌詞をおいしく調理していて、悲観してしまいがちな出来事でも素直に受け入れようという気持ちにさせてくれます。

好きな曲なので長くなってしまいましたが、この後にスガ氏の下町シリーズ『オバケエントツ』と季節外れの『愛について』が入りました。甘酸っぱい恋愛と大人の愛。最初は「え?」と思いましたが、緩急つけられるメンバーの演奏だからこそ伝わるものがありました。

メンバーがそれぞれに担当した曲コーナーも良かったですね!個人的にNo.1の『黒い靴』は、曲といい、歌詞といい、「生きていて良かった」と思わせる出来でした。3階ではあまり乗っている人はいませんでしたが(こんなにカッコいい曲なのに;;)。

人は10の幸せと 10の不幸を持って生まれて それが順番に起こる
そこに3つのウソと3つの誠実を加えて それが足のサイズになる

この歌詞だけでスゲ〜と思っていたが、全部足して26センチになっているところが更にスゲ〜と思う。
kokuaのアルバムで一番好きな曲。

削除したアカウントのツイートより

私はライブの2週間くらい前から曲を聴くのは一切やめることにしています(ある自分的事件があってからやめたw)。今回は、何を思ったか、歌詞を前日に眺めておりました。そこで、初めてこのことに気付いたのです(遅)。

もう、こんな歌詞、あのメロディー以外では絶対書かないフレーズですよ!!今作の中でナンバーワンの一節です。

(メルマガより引用)

この歌詞だけでもスゴイと思っていたのに、本当に足のサイズになっている! そこで初めて自分の足に目を向けましたよ。学校に行ったり、仕事に行ったり、誰かに会いに行ったり。メッセージとはかけ離れますが、私の人生はこの足が作ってくれているのかもしれないなと……。この歌詞を書かせた根岸さんに拍手です。はい。

kokuaのライブは本当に不思議でした。スガ氏のライブでは聴き入るというよりも自然に音楽が入って来て駆け巡るという感じなのですが、kokuaのライブでは曲と歌詞が血や肉になる感覚を覚えました。知らないうちに「未来・夢・ジブン」が明確になるという感じですね。

kokuaは栄養
スガシカオはデトックス
そんなことを思った夜

削除したアカウントのツイートより

私くらいの年齢になると夢を持っている人は少なくなるのですが、私自身は夢を持って生きています。でも、夢や未来は自分のフィルターだけを通して見るものではないと思わせてくれたのが『砂時計』でした。

『砂時計』が聴き込むほどに良いと思えるのだが、シカオちゃんが歌うにはくすぐったすぎる。

だから?『1995』が流れてくるとホッとしてしまう。

削除したアカウントのツイートより

曲調がなんとなくミスチルの『しるし』に似ていて、歌詞も絶対にスガ氏のソロでは書かれることがないであろう歌詞なのです。一人で聴いているとなんだか素直に聴けなかったのですが、生で聴いてようやく素直になれました。

素直になれなかったのは、曲のせいでも歌詞のせいでもありませんでした。自分のなかで自己消化できていないことがあり、ふとした瞬間に責めてしまうことがあります。「選ばなかった方の人生を選ぶべきだったのではないか?」という気になっていました。それが、生で聴くことによって変化しました。都合のいい解釈かもしれないけれど。

「子ども(あるいは孫)というフィルターを通した未来(親目線)」というのがこの曲の軸になっていて、親になることを選ばなかった私はどうしても受け入れられなかったのです。でも、それは間違っているなと。子どもや孫がいなくても、身内・友人・見ず知らずの他人の子どもたちを通して見る未来もあると気付きました。そのように受け入れたら、既に涙腺は崩壊していました。守るべきものは自分の子だけではないですよね……。

遠い夏に聴いたような新鮮なオト

今回のアルバムの複線とも言えるのが“夏”です。冬生まれの夏好き女である私が、心躍らないはずがありません! CDだけでも十分すぎるくらい夏感がありましたが、本物の演奏によって「海、行きた~い!」という気にもさせられました。豪太さん作の『1995』と小倉さん作の『道程』、THEさわやか系ソング(?)の『Blue』がこの時期にピッタリでした。

ここ数年の夏は猛暑でさわやかさとはかけ離れていますが、冬と違って気持ちだけは前向きになりますよね(私だけでしょうかww)? 話が前後しますが、しっとりと聴かせたカバー『Stars』『Every Time You Go Away』『青空、ひとりきり』『私たちの望むものは』の後、これまたセルフカバーの『Mujic Train ~春の魔術師~』からはおとなしかった3階も総立ちになりました。

豪太さんプロデュースのポジティブ曲『コノユビトマレ』『午後のパレード』も加わり、『夢のゴール』で終わるというセットリストでした。最高潮で終われた気がします。

どれも懐かしい気がする音なのに、2016年の音楽になっているところが不思議でした。アンコールの拍手が崩れることなく、「みんな、欲しがりだな~」と客観視もしつつ(笑)、「いや、このままでは終われないだろう」という自分もいて…。

全てを聴き終えた後の『Progress』

アンコールは本編で歌われなかった『砂時計』で始まり、なんともう一度『Progress』が歌われるという演出になっていました。

10歳の時は、20歳は大人だと思っていた。
20歳はまだ子どもで、30歳になればそれなりの大人になっていると思っていた。
30歳になったら、思っていたほどの大人ではなく…。
もうすぐ40歳になるのに、まだボヤっとしている。
Progressを聴くと、そんな思いがグルグル回る。

削除したアカウントのツイートより

何度も聴いているのに、やはり『Progress』の歌詞は秀逸です。私はあと半年で初老(40歳)に突入します。この曲が誕生した10年前は、まだ「ぼくが歩いてきた 日々と道のりを ほんとは”ジブン”というらしい」というところまで到達していませんでした。でも、40歳を手前にしてようやく”今のジブン”を受け入れられるようになりました。

きっと、いくつになっても人は「もう少し大人だと思っていた」と思う瞬間があるでしょう。完ぺきな人などいないから。それでも自分を愛してあげられるようになっていれば、小さくでも成長しているのかなと思えるようになりました。

スガ氏とは10歳違いですので、『Progress』を書いた時は彼が40歳だったことになります。私にはまだ「誰も知らない世界へ向かっていく勇気」が足りません。そもそも、頭がすでに固くなってきており、自分より下の世代から吸収する柔軟性がありません(姪と甥から学ぶことは多いですが)。スガ氏はそれを現在進行形でやっているのですよね……。私自身は、まだまだ自分にベクトルが向いているのかなと自己分析しています。

アンサーソング『夢のゴール』にある「きっとぼくらが生きる 最高のカタチは 誰かのための自分になること」に到達するまでには、もう少し時間がかかりそうです。だから、常に“あと一歩だけ、前に 進もう”と思いました。

それぞれの心に響いたであろう『Progress』の後、kokuaがはけてから会場にBGMの『夢のゴール』が流れました。さすがにホールでWアンコールはないだろうと思っていましたが、アナウンスが始まっても一部を除いては動きませんでした(あそこで帰りたくなかったよね、ホント)。

曲が終わるまで手拍子! それはメンバーに届いたはず。気持ち良く終われたライブでした。そして、私は相棒にLINEをしました。もっと愛してあげようと(上からw)。

セットリスト(本編)
  • BEATPIA From Al「Progress」
  • Progress From Al「Progress」
  • 幼虫と抜け殻 From Al「Progress」
  • オバケエントツ
  • 愛について(※)
  • 1995 From Al「Progress」
  • 黒い靴 From Al「Progress」
  • 道程 From Al「Progress」
  • kokua’s talk 2 From Al「Progress」
  • 街角 sg「Progress」カップリング
  • Stars / Simply Red From Al「Progress」
  • Everytime you go away / ポール・ヤング
  • 青空、ひとりきり / 井上陽水
  • 私たちの望むものは From Al「Progress」
  • Music Train ~春の魔術師~ / 2015年度「FM802春のキャンペーンソング」
  • Blue From Al「Progress」
  • コノユビトマレ
  • 午後のパレード
  • 夢のゴール From Al「Progress」
セットリスト(アンコール)
  • 砂時計 From Al「Progress」
  • Progress From Al「Progress」

(スガシカオオフィシャルブログ「NHKホール kokuaツアーファイナル レポート」より引用)

※なるほど! そういう思いがあったわけですね!

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